つくる責任つかう責任。大量生産・大量消費から抜け出すためには

日本の経済はこれまで、“大量生産・大量消費”を基盤に成り立ってきました。

しかし、大量生産・大量消費の経済システムは、売れ残りの廃棄や二酸化炭素の排出など、環境への負荷をないがしろにしてきた側面を指摘されています。

SDGs(Sustainable Development Goals)を基準に、循環型社会形成に向け世界が足並みを揃えるいま、大量生産・大量消費を見直す時が来ています。

今回は、身近な例から大量生産と大量消費の問題を紐解いてみます。さまざまな文脈の中で大量生産・大量消費が問題視される理由やこれからの社会の在り方を探っていきましょう。

恵方巻問題など身近な食品ロス

大量生産・大量消費システムの代表的な問題は、大量廃棄です。

2019年にクローズアップされた「恵方巻き問題」。需要に見合っていない大量生産によって多くが売れ残り、廃棄される光景が連日ニュースで取り上げられました。

では、なぜ無駄になるにもかかわらず、生産数を減らす努力がなされなかったのでしょうか。理由の一つに「廃棄する方が経済合理性がある」という考えがあります。

資本主義経済では、利益を最大化することに重きを置きます。もしかしたら今年は販売数が減るかもしれないし、逆に増えるかもしれない。恵方巻が廃棄とならないよう、完売する数を完全に予測することはできません。

そこで、廃棄するコストと作らずに売上が出なかった損を天秤に掛けるわけです。たくさん製造すれば、1つあたりの単価を減らすことができ、作らないよりも作って廃棄するほうが利益を得ることができるケースもあります。

これは食品に限った話ではありません。私たちの暮らしは、「1円でも利益が出る方を選ぶ」とは切っては切れない関係にあるのです。

ファッション業界の環境負荷

ファッション業界は、日本国内だけでも年間約100万トンの衣類が廃棄され、特に環境負荷が大きい産業と指摘されています。理由は製造までのプロセスと、売れ残った服の廃棄にあります。

流行は、常に変わりゆくものです。流行を追った商品は、流行が終われば売れ残ります。近年は、安くてお洒落なファストファッションも目まぐるしく登場し、価格競争も激化しています。

こちらも1着あたりのコストを少なくするために大量生産し、売れなければ廃棄となる悪循環が生まれています。ブランド価値を下げないために値下げや再流通をせず、埋め立てや焼却廃棄を選ぶ、販売側の姿勢も問題視されています。

先日、「サステナブルファッション」というサイトを見つけました。環境省が日本で消費される衣服の環境負担実態をまとめています。

同サイトによると、日本国内の小売業で流通する衣類の約98%は輸入です。洋服が私たちの手元に届くまでには、洋服1着につき、ペットボトルを250本製造するのと同等の約25kgの二酸化炭素を排出し、浴槽約11杯分にあたる2300ℓの水が必要です。

洋服が製造され、手元に届くまでの過程だけでも、私たちが思っている以上に多くの負荷が地球にかかっているのです。

搾取工場スウェットショップの存在

大量生産・大量消費のシステムには、労働力が搾取されるという問題もあります。低賃金かつ粗悪な労働環境での労働を強いられる工場は、スウェットショップ(Sweatshop)と呼ばれます。

2013年4月23日、バングラデシュ・ダッカ近郊の商業施設で起きた大規模倒壊事故「ラナ・プラザの悲劇」を覚えていますか。

ラナ・プラザは生産性を高めるため、違法建築による増設が行われていました。事故発生前、管理者が倒壊の発生を把握していたのにもかかわらず放置され、4000人以上が倒壊の被害に遭いました。死者1100人以上、負傷者は2500人以上、行方不明者は数百名と世界でも類を見ないほどの被害でした。

商業施設には、名だたるファッションブランドの縫製工場が数多く入っていたことでも話題となり、過酷な労働環境や搾取の構造、児童労働がクローズアップされることとなりました。

各社が人件費や素材の安い開発途上国に工場を設けることは、現地に雇用が生まれるという視点に立てば、決して悪いことではありません。1円でも多く利益を得るためにも、国内の工場では採算が合わないことは想像できるでしょう。

ただラナ・プラザの悲劇によって、見えない部分で何が起きているのか、誰が作っているのか、どんな環境なのか、現地の環境汚染を加速させていないかは、私たち消費者が見極める必要性を痛感させられました。

ごみに価値を見出す

廃棄や搾取など、課題が多くある大量生産・大量消費システムから脱却し、環境への負担を減らしていこうという取り組みは数多く行われています。

これまで廃棄物として処分されていたものに価値を生み出す方法もその一つです。

例えば、オーストラリアの「モッタイナイラム」は、本来は廃棄される食品ロスを羊に餌として与えています。

ニンジンジュースの絞りかす、オリーブの搾りかす、売れ残りのニンジンなど、餌の80%を食品ロスでまかなっています。バランスのいい餌は良質な肉質を生み出し、和牛のようなさしと旨味を実現しました。

他にも、株式会社日本環境設計が展開するファッションブランド「BRING」は、廃棄される洋服を回収し、「服から服をつくる」を事業を展開しています。

古着に含まれるポリエステルから再生ポリエステルを製造し再度洋服を作ったり、まだ着られる洋服は寄付やリユースしたりするなど、徹底したリサイクルが行われています。

これ以外にも発想の転換で、廃棄物を有効利用するさまざまなサービスや商品が世界各地で生まれています。

責任を持った生産と消費を

世界では人口増加が止まりません。現在の77億人から2050年には100億人に達するとされ、今後資源の枯渇や環境破壊の問題が懸念されています。控えめに言っても、今までのやり方では、地球はもちません。

これからの時代、生産する側も消費する側も、責任を持った製造と消費が求められます。

企業なら、環境や社会に配慮した製造や販売です。SDGsの取り組みはもちろんのこと、企業としていかに努力しているのかが、商品を選ぶ際の基準となっていくでしょう。

そのためには、原料の調達から手元に届くまでの過程を明らかにし環境負荷を追跡できるトレーサビリティやMFA(Material Flow Analysis)といった手法が、より重要視されます。

私たち消費者は、地球や社会に優しい品を選ぶことが求められます。買い物をするときに「環境や社会に配慮された品か」「本当にいま必要か」「長く大切にできるか」を意識することが必要です。

買い物は投票です。消費者に選ばれなければ、利益は出ず、企業は変わらざるを得ません。今の仕組みをすぐ変えることができなくても、環境問題やSDGsに配慮した品を選ぶことだけで、社会が少しづつ変わっていく一歩となるはずです。

【参考サイト】

エコアクション21(環境活動評価プログラム)2004年度版|環境省

平成15年度版 環境白書|環境省

令和2年版消費者白書|消費者庁